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バスの回復運転を行う際に気を付けるべきこと

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2023/06/30

バスの運行では遅延が発生すると回復運転を行うことがあります。
回復運転は、運転手の運転技術や心理状態によっては危険運転や事故につながりかねません。
本記事では、安全に回復運転を行うための準備や予防策を解説します。

 

回復運転とは

回復運転は、電車やバスのダイヤに遅れが生じた際に可能な限り正常なダイヤに戻そうとして行われる運転のことです。
通常の運転速度よりもスピードを出したり、駅やバス停での停車時間を短くしたりすることで時間の短縮を図ります。
しかしながら、運転手が定刻通りに運行しようと焦りだすと冷静な判断ができなくなり、危険な運転や事故を引き起こしてしまうことがあります。
多数の死傷者を出した2005年のJR福知山線脱線事故は、ダイヤの遅れを取り戻そうとしてスピードを出し過ぎたことが原因でした。
事故の直前、運転手は複数の要因によって心理的に追い込まれていました。
当時のJR西日本はミスをさせない方針で、運転時のミスを取り戻す時間は設定されておらず、ミスのあった社員には日勤教育という懲罰的なプログラムが存在していました。
前の駅ではオーバランによる遅れが生じ、乗客からクレームがありました。
これらの要因によって運転手は運転に集中できず、カーブに進入する際にブレーキをかけるタイミングが遅くなってしまったと報告されています。
以上は鉄道での事例ですが、バスの運転でも回復運転せざるを得ない場合は、焦らずに安全第一で運行することが大切です。
 
 

バス運転の疲労とストレス

回復運転に必要な判断力を低下させるものに、疲労やストレスがあります。
バスの運転手は疲労やストレスが溜まりやすいといわれており、主な要因には以下のものがあります。

ハードな勤務形態

バス運転手の勤務形態は、一般的にはシフト制が採用されています。
早朝始発からの勤務や、夕方から最終バスまでの勤務もあります。
勤務時間は他の職種に比べて長くなる傾向です。
長時間の運転は腰や肩に負担がかかり、眼精疲労や判断力の低下も引き起こします。
また、変則的な勤務で休日や勤務時間が不規則となると、生活リズムが乱れて疲労が蓄積しやすくなります。

定刻運転や安全運転への責任感

運転手は乗客の利便性のために定刻通りに運行しなければなりません。
乗客の安全を守るための注意義務もあります。
定刻運転や乗客の命を預かる仕事という責任感が強い運転手だと、自身を追い込んでストレスを溜めてしまいます。

乗客とのコミュニケーション

バス事業は乗客を運ぶだけではなく、サービス業でもあります。
特に高齢者や障がい者、妊産婦、子ども連れの乗客には特段の対応が必要です。
また、バス内で乗客からクレームがあった際には、運転手自ら対応しなければなりません。
乗客とのやりとりは気を遣うことから、バス運転手はストレスを抱えやすくなります。
 
 

回復運転の準備と予防策

国土交通省は、東京都の路線バスが次の停留所での発車時刻に間に合わせるために対向車線を逆走した事案を受けて、通達(国自安第1号、平成31年4月10日)を出しました。
通達では「運行の定時性その他の利用者利便の増進を図るあまり輸送の安全がおろそかにされるようなことは厳に回避する」ことを強調しています。
安全を確保しながら回復運転を行うためには、以下のような準備と予防策が必要です。

適切な休息の確保

まずは運転手の心身の状態を整えることが重要です。
運転手がストレスを抱えた状態だと、運転中に冷静な判断ができなくなるからです。
運転前には十分な睡眠をとり、労働時間中はしっかり休憩をとらなければなりません。
厚生労働省は「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」を策定し、拘束時間の上限や休息期間の基準等を設けています。
この改善基準告示は自動車運転者の健康確保等の観点から令和4年12月に見直しが行われ、令和6年4月からは新基準が施行されます。
現行と改正後の基準の主な相違点は以下の表のとおりです。

参考:厚生労働省「バス運転者の労時間等の改善基準のポイント」
https://www.mhlw.go.jp/content/001035022.pdf
厚生労働省「バス運転者の改善基準告示が改正されます!(リーフレット)」
https://www.mhlw.go.jp/content/001035029.pdf

注意力の維持

運転手は自身の運転に集中するだけでなく、道路上の変化や他の運転手の動きなどにも同時に注意を向ける必要があります。
周囲の状況を正確に把握しておくと危険を察知でき、急ブレーキや急ハンドルを避けられるからです。
しかしながら、不安や心配事にとらわれていると注意力は散漫になります。
運転前には脳の疲労やストレスが解消され、注意力を維持改善できているとよいでしょう。

乗客の安全

回復運転では乗客の安全を最優先に考えます。
円滑な運転を心がけて乗客を危険運転から守り、不快や恐怖を与えないようにします。
やむを得ず急加速や急ハンドル、急ブレーキになる際には乗客に注意を促さなくてはなりません。
乗客の乗降や車内の混雑状況なども注意深く管理し、事故や怪我のリスクを最小限に抑えます。

適切な情報提供

乗客に対して必要な情報を提供することも大切です。
乗車案内や次の停留所までの所要時間などを明確に伝えることで、乗客の不安や混乱を軽減できるからです。
現在位置を確認できると到着予測が立てられるので、クレームの未然防止にもなります。
最新の位置情報を乗客に随時提供できるシステムが導入されていることが望ましいでしょう。
 
 

危険運転を減らし事故を防ぐ、位置情報通知システム「モークル」

回復運転時の危険運転を減らすためには、運転診断機能のある運行管理サービスを利用するのが有効です。
運転診断機能によって危険運転を減らすことができれば、安全運行の確保につながるからです。
おすすめはバス位置情報通知システムの「MOQUL(モークル)」です。
「モークル」は、管理者向けの運行管理システムと利用者向けのバスの位置情報システムのどちらも利用可能です。
管理者向けには、パイオニアの運行管理システム「ビークルアシスト」を標準装備しています。
急ブレーキ、急ハンドルなどの危険運転があった際には、専用のドライブレコーダーが記録した映像をクラウドに自動送信し、管理者にもメールで通知します。
運転手にはドライブレコーダーの音声と画面で警告します。
危険運転の回数は記録・分析され、運転手ごとに点数化されたものは運転指導に活用可能です。
利用者向けには、LINEを活用したバスの現在位置情報を提供します。
バスの位置情報は15秒ごとに更新されており、利用者はLINEの画面をタッチするだけで地図上でバスの現在位置を確認できます。
実際にモークルを採用したバスの運転手からは、「バスの遅れを利用者がリアルタイムで把握できるので回復運転の際にも焦った運転をしなくなる」という声が聞かれています。
 
 

まとめ

バスの回復運転とは、ダイヤの遅れを取り戻そうとして行われる運転のことです。
回復運転は安全運行が重要ですが、運転手に疲労やストレスがあると冷静な判断ができなくなり危険運転や事故につながります。
そのため、適切な休息を確保して運転手の疲労やストレスを取り除き、注意力を維持して乗客の安全を守ります。
回復運転時の危険運転を減らすためには運転診断機能のある運行管理サービスを利用するのが有効です。
バス位置情報通知システムの「モークル」は、運行管理システムとバスの位置情報システムのどちらも利用できるおすすめのシステムです。
(執筆者:山口 史)

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