自治体がスタートアップ製品を導入しやすくなる「4号随契」とは?予算要求前に知っておきたい調達の選択肢
お役立ち情報
2026/08/31 (更新日:2026/09/06)

「良さそうなシステムだとは思うけれど、実績のある大手でないと、うちでは通しにくい」——スクールバスの位置情報システムのような新しいサービスをご検討いただく中で、自治体の担当者様からこうした声を伺うことがあります。
自治体が民間企業から製品やサービスを調達する場合、公平性を確保するために競争入札を行うのが原則です。しかし、創業から日が浅いスタートアップ企業は、実績や価格の面で競争入札に参加すること自体が難しいという事情があります。
実は、こうした状況を想定して、スタートアップ・中小企業の製品を競争入札によらず導入できる特例制度が用意されています。この記事では、その制度「4号随契」について、仕組みと活用状況、国の後押しの動きをご紹介します。
自治体とスタートアップの契約は、まだ1%程度
総務省の調査によると、2023年4月からの約2年間で、製品・技術の特例による随意契約をスタートアップ企業と結んだ自治体は、全国1,788自治体のうち約1%にとどまっています。
政府はスタートアップの活用を推進する方針を掲げていますが、実際の導入は東京都・千葉県など6都県、福岡市・茨城県つくば市といった一部の市町村にとどまっているのが現状です。
「4号随契」とは何か
この特例制度は、2004年に新興・中小企業の後押しを目的として創設されました。自治体のトップ(首長)が認定した事業者であれば、実績の少ない小規模な企業であっても、競争入札を経ずに随意契約で製品やサービスを調達できる仕組みです。
制度を利用する際は、企業側が自社の製品・技術の新規性や生産・提供計画をまとめた計画文書を自治体に提出します。自治体は委員会を開き、2名以上の学識経験者の意見を聴取したうえで、首長が事業者を認定し、契約に至るという流れです。
活用が進んでいない理由
制度自体は20年以上前から存在するにもかかわらず、活用が進んでいない背景には、いくつかの課題があります。
- 新規性を客観的に判断するための「目利き力」が自治体側に蓄積されていない
- 随意契約という性質上、市民や議会に納得してもらえる情報公開の仕組みが必要になる
- 一度ある自治体で認定を受けても、別の自治体では改めて評価を受け直す必要がある
特に3点目は、複数の自治体への展開を目指す企業にとって大きな負担になります。実際に、東京都八丈町で4号随契による契約を結んだある医療系スタートアップの代表者も、自治体ごとに評価をやり直す必要がある点を課題として挙げています。
国・自治体側の後押しの動き
こうした課題に対応するため、いくつかの動きが出てきています。
東京都の連携モデル
東京都は、都内外の29自治体と連携し、同じ製品を調達する場合には、実施計画を自治体間で融通できる仕組みを作っています。一つの自治体で認定を受けた実績を、連携する他の自治体でも活用しやすくする取り組みです。
国による制度整備
政府は今年5月に取りまとめた方針の中で、すべての都道府県・政令指定都市がスタートアップからの調達を実施するという目標を掲げました。
さらに8月には、経済産業省と総務省が全自治体向けに新しい通知を発出しています。経済産業省の支援プログラムに認定された企業や、すでに他の自治体で評価を受けた企業については、改めて学識経験者による評価を受ける必要がないとの見解が示されました。
予算要求・調達を検討する自治体担当者へ
スクールバスの位置情報システムのような、比較的新しいジャンルのサービスは、実績のある大手事業者が少なく、スタートアップ企業が担い手になっているケースが少なくありません。
競争入札の実績がないことを理由に導入を見送るのではなく、4号随契のような制度を活用できないか、まずは自治体内の調達担当部署に確認してみることをおすすめします。特に、他の自治体ですでに導入実績があるサービスであれば、前述の8月の通知により、評価のハードルが下がっている可能性があります。
予算要求資料を作成する段階から、通常の競争入札とは異なる調達方法の選択肢があることを念頭に置いておくと、検討の幅が広がります。
よくある質問
Q. 「4号随契」とはどのような制度ですか?
自治体のトップが認定した新興・中小企業であれば、競争入札を経ずに随意契約で製品・サービスを調達できる制度です。2004年に創設されました。
Q. なぜ自治体はスタートアップとの契約に慎重なのですか?
新規性のある製品・技術を客観的に評価する「目利き力」が自治体側に十分蓄積されていないことや、随意契約について市民・議会への説明責任を果たす情報公開の仕組みが必要になることが、主な理由として挙げられています。
Q. すでに他の自治体で導入されているサービスなら、評価は簡単になりますか?
2026年8月の国からの通知により、すでに他の自治体で評価を受けた企業や、経済産業省の支援プログラムに認定された企業については、改めて学識経験者による評価を受ける必要がないとの見解が示されています。
Q. 4号随契を検討する場合、まず何をすればよいですか?
自治体内の調達・契約担当部署に、対象の製品・サービスが4号随契の対象となり得るか確認することが第一歩です。企業側が新規性や提供計画をまとめた計画文書を用意し、委員会での評価・首長の認定を経て契約に至ります。
まとめ
- 自治体がスタートアップ企業と結ぶ契約は、全国でまだ1%程度にとどまっている
- 「4号随契」は、実績の少ない新興・中小企業の製品を競争入札によらず調達できる特例制度
- 活用が進まない背景には、自治体側の目利き力不足や情報公開の負担がある
- 2026年8月の国の通知により、他自治体で評価済みの企業は再評価が不要になるなど、活用のハードルが下がりつつある
- 予算要求・調達の検討段階から、競争入札以外の選択肢も視野に入れることが重要
参考資料
「自治体、新興と契約1% 目利きや情報開示に不安 政府推奨の制度、活用進まず」日本経済新聞 朝刊 2026年8月26日付






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