部活動の遠征バス、実は「顧問・学校任せ」になっていないか【部活動の遠征・送迎シリーズ第2回】
スクールバス
2026/09/05 (更新日:2026/09/06)

【連載シリーズ 第2回/全7回】部活動の遠征・送迎を見直す
第1回はこちら:部活動の遠征、移動手段の安全確保は十分か?文科省通知から読み解く
前回は、令和8年5月以降に文部科学省・国土交通省から発出された、部活動遠征等の移動の安全確保に関する通知の内容をご紹介しました。今回は視点を変えて、実際の学校現場で、遠征の移動手段がどのように手配されているのか、その実態を整理します。
よくある手配パターン
部活動の遠征・大会参加時の移動手段は、学校によってさまざまな方法で手配されています。代表的なパターンを挙げると、次のようになります。
- 貸切バス会社に、顧問が個別に電話・メールで手配する
- 保護者会や地域の知人など、個人的なつながりで運転者を探す
- 顧問自身が学校所有の車両、またはレンタカーを運転する
- 複数の保護者が、それぞれの自家用車で分乗して送迎する
- 学校が保有するスクールバスを、通常の通学とは別に遠征用にも活用する
これらのうち、貸切バス会社への正式な依頼や、学校保有のスクールバスの活用は、運行主体・責任の所在が比較的明確です。一方で、個人的なつながりによる運転者の手配や、保護者による分乗は、学校として関与する範囲が曖昧になりやすい手配方法だといえます。
なぜ「顧問任せ」になりやすいのか
こうした慣習的な手配が続いている背景には、いくつかの構造的な理由があります。
- 遠征のたびに発生する移動手段の手配を、学校として一元的に管理する部署・担当者が明確でない
- 貸切バスの手配には費用がかかるため、予算の制約から代替手段を探さざるを得ない
- 過去から続いてきた慣習であり、特に問題が起きなければ見直される機会がない
- 顧問は指導業務に加えて移動手段の手配まで担うことになり、負担が大きい
こうした事情から、遠征の移動手段の手配は、学校全体で管理される仕組みというより、顧問個人の経験や人脈に依存した「属人的な対応」になりやすい構造があります。
リスクの所在
属人的な手配には、次のようなリスクが伴います。
- 運転者の免許確認漏れ:運行の形態によっては第二種免許が必要になる場合がありますが、無償の送迎だと思い込み、確認が漏れるケースが考えられます(免許の要否についてはこちらの記事で詳しく解説しています)
- 任意保険の加入状況が不明確:個人所有の車両や、個人的に手配した運転者の場合、事故時の補償範囲を学校側が把握していないことがあります
- 緊急連絡体制の不備:運行中に何かあった場合、誰が・どこに・どのように連絡するかが、事前に共有されていないことがあります
- 契約書・依頼記録がなく、責任の所在が曖昧:口頭や個人的なやり取りで完結してしまい、学校としての記録が残らないケースもあります
実際に、今回の一連の通知のきっかけとなった事故でも、運転者の手配や資格をめぐる、学校側と運行を担った側との間での説明の食い違いが報じられています。運転者の手配を「誰が、どのような基準で行うか」を学校として明確にしておくことの重要性は、この点からもうかがえます。
学校が組織として対応するために
前回ご紹介した6月30日のとりまとめでも、「運転者の手配は学校が直接行うこと」が対策の一つとして挙げられていました。属人的な手配から、組織としての手配へ移行するために、次のような取り組みが考えられます。
- 遠征の移動手段の手配窓口を、学校として一元化する
- 運転者・事業者との依頼内容を、書面(メール等の記録が残る形式を含む)で残す
- 運転者の免許種別を、依頼時に必ず確認する運用にする
- 学校が保有するスクールバスがある場合、遠征への活用を選択肢として検討する
次回は、実際に貸切バス・自家用車・教員運転など、移動手段ごとに求められる法令上の注意点を、より具体的に整理します。
よくある質問
Q. 部活動の遠征の移動手段は、法律上どこかに届け出る必要がありますか?
移動手段そのものの届け出義務はありませんが、学校保健安全法第29条に基づく「危機管理マニュアル」に、校外活動時の対応が反映されている必要があります。また、貸切バス・タクシー事業者に依頼する場合は、国の許可を受けた事業者かどうかの確認が求められています。
Q. 保護者による分乗は、避けるべきですか?
一律に禁止されているわけではありませんが、事故時の補償範囲や緊急連絡体制が事前に共有されていないと、トラブルの原因になり得ます。実施する場合は、学校として最低限のルール(保険加入状況の確認など)を定めておくことが望ましいです。
Q. 顧問が運転する場合、何を確認すべきですか?
運転する車両の区分に応じた免許を保有しているか、学校として確認する必要があります。特に人数の多い部活動でマイクロバスなどを使用する場合は、中型・大型免許の要否も確認が必要です。
Q. 学校のスクールバスを遠征に使うことは、実際に行われていますか?
はい。通学用のスクールバスを部活動の遠征にも活用している学校もあります。運行主体・運転者があらかじめ明確であることに加え、日頃から運行を担うドライバーの稼働機会の確保にもつながっているという声も聞かれます。
まとめ
- 部活動の遠征の移動手段は、貸切バスの正式依頼から個人的なつながりによる手配まで、学校によって様々な方法がとられている
- 属人的な手配が続く背景には、一元管理する部署の不在や予算制約などの構造的な理由がある
- 免許確認漏れ、保険加入状況の不明確さ、緊急連絡体制の不備、契約記録の欠如などがリスクとして挙げられる
- 運転者の手配を学校として一元化し、記録を残す運用に移行することが求められている
この連載の記事一覧
- 第1回:部活動の遠征、移動手段の安全確保は十分か?文科省通知から読み解く
- 第2回:部活動の遠征バス、実は「顧問・学校任せ」になっていないか(この記事)
- 第3回:貸切バス・自家用車・教員運転、遠征の移動手段ごとの法令上の注意点(近日公開)
- 第4回:部活動の「地域移行」で増える、学校外への移動ニーズ(近日公開)
- 第5回:遠征中の位置情報共有、保護者・学校間でどう仕組み化するか(近日公開)
- 第6回:中学校の部活動送迎、小学校の統廃合対応とは違う課題(近日公開)
- 第7回:部活動遠征を「安全に、仕組みで」支える体制づくり(近日公開)






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