部活動の遠征、移動手段の安全確保は十分か?文科省通知から読み解く【部活動の遠征・送迎シリーズ第1回】
スクールバス
2026/09/03 (更新日:2026/09/06)

【連載シリーズ 第1回/全7回】部活動の遠征・送迎を見直す
部活動の大会・コンクールへの参加や合宿など、学校外への移動を伴う活動は、多くの中学校・高校で日常的に行われています。しかし、こうした移動の手配や安全管理が、これまで「顧問任せ」「現場の慣習任せ」になっていた学校も少なくないのではないでしょうか。
令和8年5月、部活動の遠征のための移動中に、生徒に死傷者が出る重大な事故が発生しました。この事故を受け、文部科学省と国土交通省は、学校教育等における移動の安全確保について、全国の教育委員会・学校に向けた通知を相次いで発出しています。
この記事では、シリーズ第1回として、国が示した安全確保の方針を整理し、学校・教育委員会が今取り組むべきポイントをご紹介します。
令和8年5月19日の通知
事故を受けて最初に発出されたのが、令和8年5月19日付の通知です。主なポイントは次の通りです。
- 部活動の遠征や遠距離の会場での大会・コンクールへの参加を含め、校外活動時の生徒の安全確保に万全を期すこと
- 自動車で移動する場合には、シートベルトの着用を徹底すること
- 事故防止に関する対応方針や、事故発生時の緊急連絡体制・対応方法を、事前に保護者を含む関係者間で共有すること
- 学校保健安全法第29条に基づく「危機管理マニュアル」の記載内容を点検し、必要に応じて改定すること
- 貸切バスやタクシーによる運送を事業者に依頼する場合は、国の許可を受けた事業者と適切に契約すること
いずれも基本的な内容ですが、裏を返せば、これらが徹底されていなかったケースがあったからこそ、改めて全国に向けて通知されたということでもあります。
6月30日にとりまとめられた「移動の安全確保のための対策」
5月19日の通知に続き、文部科学省と国土交通省は「学校教育等に関する移動の安全確保に向けた連絡会議」を設置し、関係者へのヒアリングを踏まえて、6月30日により具体的な対策をとりまとめました。主な項目は次の7つです。
- ガバナンスの徹底(担当者任せにせず、組織として対応する)
- 適切な事業者選定と契約の透明化・文書化
- レンタカーでの契約の在り方
- 自家用車・レンタカー使用時に確認すべきポイントをまとめた「安全管理チェックシート」の活用
- 運転者の手配の在り方(学校が直接手配することなど)
- 自動車に教職員等が同乗することが望ましいことを踏まえた、必要な教職員等の適切な配置
- 学校の管理職・教職員に対する安全意識の啓発・研修
特に5番目の「運転者の手配は学校が直接行う」という点は、これまで顧問や保護者が個人的なつながりで運転者を探していたケースがあったことを踏まえた対策と考えられます。運行主体・責任の所在を明確にすることが、今回の対策の大きな柱の一つです。
「原則、公共交通機関・貸切バス等またはスクールバスを利用する」という位置づけ
今回のとりまとめでは、教育課程内の活動で移動が必要となる場合、原則として公共交通機関、貸切バス等、またはスクールバスを利用することが基本とされています。
この位置づけは、学校が日常的な通学に使用しているスクールバスを部活動の遠征にも活用する場合、次のような利点があることを裏付けています。
- 運行主体(学校・教育委員会)が明確である
- 運転者・車両があらかじめ把握・管理されている
- 都度、個人的なつながりで運転者を探す必要がない
実際に、通学用のスクールバスを部活動の遠征にも活用している学校もあります。移動距離が長い大会への遠征でスクールバスを活用することで、生徒の移動手段が安定するだけでなく、日頃から運行を担っているドライバーの稼働機会の確保にもつながるといった声も聞かれます。
学校・教育委員会が今、確認すべきこと
今回ご紹介した通知・対策を踏まえ、学校・教育委員会が確認しておきたいポイントを整理します。
- 部活動の遠征・移動手段の手配を、誰が・どのような基準で行っているか
- 運転者の免許・資格を、学校として確認する体制になっているか
- 事業者に依頼する場合、正規の許可を受けた貸切バス・タクシー事業者かどうかを確認しているか
- 緊急時の連絡体制が、保護者を含めて事前に共有されているか
- 「危機管理マニュアル」に、校外活動時の移動に関する記載が反映されているか
次回は、こうした遠征の移動手段が、実際の学校現場でどのように手配されているのか、その実態と潜在的なリスクについて詳しく見ていきます。
よくある質問
Q. 文部科学省の通知は、いつ、どのような経緯で出されたのですか?
令和8年5月に発生した部活動遠征中の重大な事故を受け、同月19日に文部科学省・国土交通省が連名で最初の通知を発出しました。その後、関係者へのヒアリングを踏まえ、6月30日により具体的な対策がとりまとめられ、全国の教育委員会・私学担当部局に通知されています。
Q. 通知では、部活動の移動手段としてどのようなものが推奨されていますか?
教育課程内の活動で移動が必要な場合、原則として公共交通機関、貸切バス等、またはスクールバスを利用することが基本とされています。
Q. 通知の対象は公立学校だけですか?
いいえ。通知は全国の教育委員会に加えて、私学を所管する部局にも発出されており、公立・私立を問わず対象となっています。
Q. 学校がまず着手すべきことは何ですか?
現在、部活動の遠征・移動手段の手配を誰がどのような基準で行っているかを洗い出し、運転者の免許確認や緊急連絡体制が整っているかを点検することが第一歩です。あわせて、学校の「危機管理マニュアル」に校外活動時の移動に関する記載が反映されているかも確認が必要です。
まとめ
- 令和8年5月の重大事故を受け、文部科学省・国土交通省は部活動遠征等の移動の安全確保について全国に通知を出した
- 5月19日通知では、シートベルト着用の徹底、緊急連絡体制の共有、危機管理マニュアルの点検などが求められた
- 6月30日のとりまとめでは、ガバナンスの徹底、事業者選定の透明化、運転者の手配の在り方など7項目が示された
- 教育課程内の移動は、原則として公共交通機関・貸切バス等またはスクールバスの利用が基本とされている
- 学校・教育委員会は、現在の遠征移動手段の手配実態を点検することから始める必要がある
参考資料
文部科学省「部活動の遠征等における安全確保について(通知)」
https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/1417343_00054.htm
文部科学省「『学校教育等に関する移動の安全確保のための対策』のとりまとめについて(通知)」
https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/1417343_00061.htm
この連載の記事一覧
- 第1回:部活動の遠征、移動手段の安全確保は十分か?文科省通知から読み解く(この記事)
- 第2回:部活動の遠征バス、実は「顧問・学校任せ」になっていないか(近日公開)
- 第3回:貸切バス・自家用車・教員運転、遠征の移動手段ごとの法令上の注意点(近日公開)
- 第4回:部活動の「地域移行」で増える、学校外への移動ニーズ(近日公開)
- 第5回:遠征中の位置情報共有、保護者・学校間でどう仕組み化するか(近日公開)
- 第6回:中学校の部活動送迎、小学校の統廃合対応とは違う課題(近日公開)
- 第7回:部活動遠征を「安全に、仕組みで」支える体制づくり(近日公開)






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