コミュニティバス導入における課題と成功事例
コミュニティバス
2021/11/12
少子高齢化が進む昨今、全国の自治体で公共交通を見直す取り組みが進められています。地域交通の再生・活性化をはかる中で、注目されているのがコミュニティバスです。
今回はコミュニティバスの課題や成功のためのポイントについて詳しく解説していきます。
コミュニティバスとは
コミュニティバスとは一体どんなものをさすのでしょうか。導入にあたり、まずその定義や特徴を確認してみましょう。
一般的な定義
実は、明確な定義はありません。既存の路線バスなどとの線引きが難しいのが実情です。ですので導入自治体が名乗れば、そのバスサービスはコミュニティバスになります。
ガイドライン
国土交通省はより良い地域交通サービスをつくるために「コミュニティバスの導入に関するガイドライン」を定めています。以下のポイントが検討する上で定義の代わりになるでしょう。
- 交通空白地域・不便地域の解消等を図るため、市町村等が主体的に計画し、運行するもの。
- そのうち次のいずれかの方法で運行するもの。
- 一般乗合旅客自動車運送事業者に委託して運送を行う乗合バス(乗車定員11人未満の車両を用いる「乗合タクシー」を含む )
- 市町村自らが自家用有償旅客運送者の登録を受けて行う市町村運営有償運送
特徴
国土交通省のガイドラインに沿うコミュニティバスにおいて、運行している事業に共通する特徴をまとめると以下の4つになります。
- 従来の交通でカバーできていないニーズに合わせて、ルートを設定する
- 路線バスなどに比べ、区間同士の距離が短い
- 日常的な利用を想定しているため価格も安い
- 運営・運行を分けている(自治体やNPOが運営を行い、運行する民間バス事業者へ財政支援・委託を行う。)
コミュニティバス導入の目的
コミュニティバスは従来の交通でカバーできていないニーズに合わせてルートを設定して行う事業です。そのため、事業単独で黒字にしていくのがとてもむずかしい事業と言えます。安定した運営で導入効果を上げるためには「何のためにコミュニティバスを導入するのか」を明確にしましょう。
主な目的
では、コミュニティバス導入の目的にはどのようなものがあるでしょうか。国土交通省が挙げる項目は以下の4つです。
- 利便性の向上(例:既存のバスや公共交通のない不便な地域の利便性改善のため)
- 環境(例:自動車通勤によって混雑する道路交通の緩和のため)
- 福祉(例:地域の高齢者や障害者の移動支援のため)
- 地域の活性化 (例:周辺地域、商業施設などへのアクセス強化で地域活性化に寄与するため)
理解を得るポイント
安定した運営で忘れてはいけないのが合意形成です。住民や競合するバス事業者の理解が得られる目的を設定し、理解を得ていく必要があります。
そのために、国土交通省は以下の3点が重要だとしています。
- 事前に導入の目的を明確に設定する
- 地域の交通状況やニーズを把握する
- 社会実験や各種調査の実施等により、導入効果を分析し明らかにする
コミュニティバスの現状と課題
「コミュニティバスを運行させれば、地域の利用者の利便性を増し地域再生につながる!」と思いたいところですが、導入した各自治体の多くは以下のような課題に直面しています。
課題1.利用者が減ってしまう
コミュニティバスは利用者のニーズに合わせて運行していくものです。導入した当時は利用ニーズは当然高いです。しかし、過疎化に伴い利用者が減少。採算が合わずに運行を継続できなくなるといったケースがあります。
自治体の人口は構成比も含め年々動いていきますので、こうした変動するニーズへの対応が課題の一つです。
課題2.運行コストが上昇してしまう
高齢者の免許返納などが進み、コミュニティバスの利用者が増えている自治体もあります。しかし、コミュニティバス事業は価格設定がおおむね安いです。
そのため、燃料費や人件費といった運行コストの上昇が賃料収入の伸びを上回ってしまう場合があります。こうした収支バランスへの懸念がもう一つの課題です。
利用者数やニーズ、人件費や燃料費などは年々変動します。代替手段として利用者の予約があった場合のみ運行する「デマンド型交通」を採用する自治体も増えています。しかし、予約に応じて運行することでかえってコストがかかる・不便になるケースもあります。万能とは言い切れません。コミュニティバスと共に比較検討する必要があるでしょう。
コミュニティバスの成功事例
導入の目的をしっかりと定めずに運行まで進めてしまうバス事業は、ほぼ失敗すると言われています。しかし、コミュニティバスには利用者の生活満足度を高めた成功事例もあります。
成功事例:東京都武蔵野市の「ムーバス」
⑴1通の市民の手紙からスタート
平成7年に運行がはじまった「ムーバス」は、なんと市内に住む高齢の女性が市長宛に出した1通の手紙をきっかけに実現した事業です。自転車・自動車を運転できず、バス亭も遠く買い物に不便を感じる一人の訴え、ニーズを拾い上げました。
⑵ニーズを探る現地の交通環境の詳細な調査
女性の声を受けた後、グループインタビューやビデオ撮影などが行われました。これは高齢者にとっての交通環境の障害やニーズを、当事者の本音を引き出して究明するためのものでした。これを元に作成された報告書により、正確なニーズ把握が実現しました。
⑶実施検討委員会による具体的な運行計画の策定
調査報告書を元に具体的な計画が話し合われた結果、以下のような運行プランが作成されました。
- 平均停留所間隔200mを環状運転
- 全ての路線が毎時同じ時間に停まるパターンダイヤ
- 運賃100円の均一制(小児・シルバー・障がい者・介助者割引などなし)
- 狭い道路を中心に走行(既存路線バスと棲み分け)
更に住民へのインタビューやアンケートなどを丁寧に行い、試験運転も実施。正式に運行が始まった「ムーバス」事業は初年度から黒字。
以降に赤字になる年でも大きな損失にならない優良事例として脚光を浴びました。
成功のヒケツ
この「ムーバス」の成功事例に見る押さえるべきポイントは、以下の2つです。
利用者ニーズの把握
コミュニティバスは市民の活動の障害となるものを「バス」で解決しようというものです。そのため、どこのだれが・どのように・何に対して・どのぐらい困っているのかをしっかりとヒアリングする必要があります。
市民参加(パブリック・インボルブメント手法)
コミュニティバスは地域の小さくとも本当に困っていることを解決していくため、自治体の中だけで議論を完結させず、住民に参加してもらい、適宜計画の修正や調整を行うプロセスが必要です。
▼地域公共交通の活性化・再生への事例集(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/htm/traffic.html
バスの位置情報LINE通知システム「モークル」
以上のように、導入効果をあげるためには地域に住む利用者ニーズに応えていく必要があります。その上で事業により利用者の満足度が向上していくことが何より重要です。
弊社が提供する「モークル」は、そのコミュニティバスの利用者満足度を向上させることのできるサービスです。
「モークル」の特徴
- 15秒毎の更新で、バスの現在位置をご利用者様が正確に知ることができます。
- ご利用者様が問い合わせた時だけ通知します。
- 多くの方が利用しているLINEだから簡単に利用できます。