【連載シリーズ第1回/全7回】学校統廃合とスクールバス公立学校のスクールバスはいつから検討する?
2026/07/28

学校統廃合を進める際、多くの自治体が検討するのがスクールバスです。
児童生徒数の減少により学校の統廃合が進む一方で、通学距離はこれまでより長くなる傾向があります。そのため、児童生徒が安全に通学できる環境を整備するために、スクールバスの導入を検討する自治体が増えています。
一方で、「スクールバスは、いつ頃から検討を始めればよいのだろうか」と疑問を持つ自治体担当者も少なくありません。
スクールバスは、単にバスを用意すれば運行できるものではありません。利用対象者の把握、運行ルートやバス停の設定、学校施設との動線計画、保護者への説明、運行事業者との調整など、多くの準備が必要になります。
この記事では、富山市、愛知県弥富市、富山県上市町が公開している計画書をもとに、スクールバスがどのタイミングで検討されているのかをご紹介します。
スクールバスはいつから検討するのか
学校統廃合が決まると、「新しい学校が完成する少し前からスクールバスを検討すればよい」と思われることがあります。
しかし、実際に自治体が公表している計画書を見ると、スクールバスは学校が完成してから検討するものではありません。学校再編の基本方針や基本計画を策定する段階から、通学方法の一つとして検討されています。
これは、スクールバスの計画が、学校施設の設計にも大きく関係するためです。例えば、次のような点があります。
- バス乗降場をどこに設置するか
- 保護者の送迎スペースをどこに設けるか
- 歩行者と車両の動線をどのように分けるか
- バスが安全に転回できる場所を確保できるか
- 複数台のバスが同時に出入りできるか
こうした内容は、校舎や校庭の配置とあわせて検討する必要があります。
富山市の事例
利用人数や運行ルートまで基本計画で検討
富山市では、水橋地区の小中学校を統合し、新しい義務教育学校を整備する計画が進められました。開校は令和8年4月に予定されています。
地域での説明や学校再編の検討は、開校のおよそ7年前から始まっています。
富山市の「水橋地区義務教育学校整備基本計画」では、スクールバスについて、次のような項目が検討されています。
- スクールバスの利用対象地域
- 利用する児童生徒数の試算
- 運行ルート
- 停留所の候補
- 登下校時の便数
- コミュニティバスとの連携
- 水橋駅との接続
- 運行事業者との調整
計画では、条件によって約194人、または約329人がスクールバスを利用すると試算されています。
また、学校施設の配置についても、スクールバスの乗降場、車両の動線、歩車分離、転回スペースなどが考慮されています。
この事例から、スクールバスは単なる通学手段ではなく、学校施設の設計に関わる重要な要素であることが分かります。
愛知県弥富市の事例
学校再編方針と同時にスクールバスを位置付け
弥富市では、令和5年11月に「弥富市小学校再編整備方針」を公表しています。
新しい学校の開校は令和10年度を予定しており、方針の公表から開校まで約5年間の準備期間があります。
特徴的なのは、学校再編の方針を示した段階で、すでにスクールバスについて記載されていることです。
- スクールバスの導入
- スクールバスターミナルの整備
スクールバスは、学校が完成してから追加するものではなく、学校整備の基本方針に含まれています。
特にスクールバスターミナルを整備する場合は、バスの台数、車両の出入り、児童の乗降場所、校舎までの歩行動線などを、学校の設計段階から検討しなければなりません。
弥富市の事例からも、スクールバスと学校施設を一体で計画する必要があることが分かります。
富山県上市町の事例
学校予定地の選定にもスクールバスを考慮
上市町では、町内の6小学校と1中学校を統合し、新しい義務教育学校を整備する計画が進められています。
令和5年3月に教育委員会から学校のあり方が提案され、令和6年1月には学校教育審議会から答申が提出されました。
開校は令和15年4月を予定しています。答申から開校まで約9年間あり、学校再編の検討開始から考えると、さらに長い期間をかけた計画です。
上市町では、学校の基本計画を作る過程で、次のような取り組みが行われています。
- 町民ワークショップ
- 教員へのヒアリング
- 児童生徒へのアンケート
- 民間事業者への市場調査
- PFI導入可能性の検討
また、学校予定地を選定する際の条件として、「スクールバスのアクセス」が挙げられています。
これは、学校の場所を決める段階から、スクールバスが安全に進入できるか、周辺道路に問題がないか、複数の地域からアクセスしやすいかといった点を検討していることを意味します。
上市町の事例では、スクールバスが運行開始直前の課題ではなく、学校の立地や整備方式にも関係する重要な検討項目となっています。
3自治体を比較すると見えてくること
愛知県弥富市
- 開校までの準備期間:約5年
- 学校再編方針の段階でスクールバス導入を明記
- スクールバスターミナルの整備も計画
富山市
- 開校までの準備期間:約7年
- 利用人数、対象地域、ルート、停留所、便数まで検討
- 学校施設の配置や車両動線にも反映
富山県上市町
- 答申から開校までの準備期間:約9年
- 学校予定地の選定時からスクールバスのアクセスを考慮
- 学校建設、PFI、地域交通などと一体で検討
準備期間には違いがありますが、3自治体には共通点があります。
それは、スクールバスを学校完成直前から検討しているわけではないということです。学校再編の基本方針や基本計画を作る段階から、学校施設、通学区域、地域交通などとあわせて検討されています。
3自治体の計画から分かった共通点
スクールバスは学校再編の初期段階から検討されている
3自治体とも、開校直前になって初めてスクールバスを検討しているわけではありません。学校統廃合の方針や、新しい学校の基本計画を作る段階から、通学手段としてスクールバスが検討されています。
学校施設の設計にも影響する
スクールバスを導入する場合は、乗降場や車両動線、転回スペース、歩車分離などを学校施設の設計に反映する必要があります。必要なバスの台数や車両の大きさが分からなければ、十分な乗降スペースを確保できない可能性があります。
学校の立地にも関係する
上市町では、学校予定地を選定する条件として、スクールバスのアクセスが考慮されています。学校予定地へ大型バスが安全に進入できるか、周辺道路に十分な幅があるか、複数の地域からアクセスしやすいかといった点も、学校用地を決める際の重要な条件になります。
地域公共交通との連携も検討されている
富山市の計画では、スクールバスだけでなく、コミュニティバスや鉄道駅との接続についても検討されています。児童生徒の通学手段だけを切り離して考えるのではなく、地域全体の交通網の中でスクールバスをどのように位置付けるかが重要になります。
自治体がスクールバスを計画する際のポイント
今回ご紹介した3自治体の事例をもとに、スクールバスを計画する際の主な検討項目を整理します。
- スクールバスを利用する児童生徒の人数
- 利用対象となる地域や通学距離
- 運行ルートと停留所の位置
- 必要な車両台数と車両の大きさ
- 登校便と下校便の時刻
- 部活動や学年別下校への対応
- スクールバス乗降場の位置
- 保護者送迎車両との動線分離
- 歩行者、自転車、車両の安全な動線
- 地域公共交通との連携
- 運行事業者との役割分担
- 保護者への運行状況の案内方法
- 遅延や運休が発生した場合の連絡方法
- 児童生徒の乗車・降車を確認する方法
スクールバスは、車両と運転手を確保するだけでは運行できません。学校、教育委員会、運行事業者、保護者など、多くの関係者が情報を共有できる体制を作る必要があります。
スクールバスシステムも早い段階から検討する
スクールバスを計画する際は、運行ルートや車両だけでなく、運行開始後の情報共有についても検討する必要があります。例えば、次のような課題が考えられます。
- バスが遅れたときに保護者へどのように案内するか
- 学校や教育委員会がバスの現在位置を確認できるか
- 児童生徒がバスに乗ったか、降りたかをどのように確認するか
- 運行会社と学校がどのように情報を共有するか
こうした課題に対応する方法の一つが、バス位置情報システムや乗降管理システムの活用です。
システムの検討を運行開始直前に行うと、学校側の運用や保護者への案内、機器の設置場所などを十分に調整できないことがあります。学校施設やスクールバスの運行方法を検討する段階から、位置情報や乗降管理などのICT活用についても検討しておくことが重要です。
まとめ
- スクールバスは、学校が完成してからではなく、学校再編の初期段階から検討されている
- 弥富市では、学校再編方針の段階でスクールバスとバスターミナル整備を明記している
- 富山市では、利用人数、対象地域、ルート、停留所、便数まで基本計画で検討している
- 上市町では、学校予定地の選定条件としてスクールバスのアクセスを考慮している
- スクールバスは、学校施設の配置や地域公共交通にも関係する
- 位置情報や乗降管理などのシステムも、早い段階から検討することが望ましい
今回ご紹介した3自治体では、開校までの準備期間は約5年から9年と異なります。
しかし、どの自治体もスクールバスを開校直前の課題とは考えていません。学校再編の基本方針や基本計画の段階から、安全な通学環境を作るための重要な要素として検討しています。
これから学校統廃合や義務教育学校の整備を進める自治体では、学校施設、通学区域、地域交通、保護者への情報提供などを含め、早い段階からスクールバスの検討を始めることが重要です。
参考資料
富山市「水橋地区義務教育学校整備基本計画」
https://www.city.toyama.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/012/457/kihonkeikaku1.pdf
上市町「義務教育学校整備に関する計画」
https://www.town.kamiichi.toyama.jp/page/13792.html
弥富市「小学校再編整備方針」
https://www.city.yatomi.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/005/333/2023.11.10A3saihennseibihousin.pdf
この連載の記事一覧
- 第1回:学校統廃合でスクールバスはいつから検討する?3自治体の計画書から見る導入スケジュール(この記事)
- 第2回:学校統廃合でスクールバス計画は完成しない 運行開始後の「運用」を考えることが重要です
- 第3回:スクールバスのルートはどう決める?(8月3日公開予定)
- 第4回:スクールバスの利用対象はどう決める?(8月5日公開予定)
- 第5回:学校設計とスクールバスの関係(8月7日公開予定)
- 第6回:保護者説明会でよくある質問(8月10日公開予定)
- 第7回:スクールバスICT導入のタイミング(8月12日公開予定)






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