【連載シリーズ第2回/全7回】学校統廃合とスクールバス
スクールバス
2026/07/29

【連載シリーズ 第2回/全7回】学校統廃合とスクールバス
第1回はこちら:学校統廃合でスクールバスはいつから検討する?3自治体の計画書から見る導入スケジュール
学校統廃合に伴うスクールバス計画では、利用人数や運行ルート、停留所、車両台数など、多くの項目を事前に検討します。
前回の記事では、富山市・弥富市・上市町の事例をもとに、多くの自治体が開校の5年から10年前頃からスクールバスの検討を始めていることをご紹介しました。
しかし、スクールバスは計画書が完成すれば終わりではありません。実際に運行が始まると、計画段階では想定できなかった課題が見えてきます。スクールバスを長く安全に運行するためには、「車両を導入すること」よりも、「運用を改善し続けること」が重要です。
計画どおりにいかないことは珍しくありません
どれだけ綿密に計画を立てても、運行開始後には新たな課題が見つかることがあります。
例えば、次のような変化です。
- 交通事情の変化による運行ルートの見直し
- 安全性を高めるための乗降場所の変更
- 児童生徒数の増減
- 乗車時間の変化
- 学校行事や部活動への対応
こうした変化は、どの自治体でも起こり得るものです。重要なのは、「計画どおりに運行すること」ではなく、状況に応じて改善を続けられる運用体制を整えておくことです。
運転手不足は全国共通の課題
現在、多くの自治体が頭を悩ませているのが、スクールバスの運転手不足です。
スクールバスは教育委員会が直接運行するケースは少なく、地域のバス会社やタクシー会社、運送会社などへ運行を委託することが一般的です。しかし近年は、路線バスやコミュニティバス、公営バスなどでも運転手不足が深刻化しています。
そのため、スクールバスも同じ地域の事業者へ委託する場合、限られた人材をどのように確保するかが大きな課題になります。運転手不足は、便数や運行時間、運行ルートにも影響する可能性があります。
スクールバスの計画では、現在の状況だけでなく、数年後の運行体制も見据えながら検討することが重要です。
車両の調達にも時間がかかる時代
スクールバスに使用される車両は、マイクロバスが中心です。現在は、次の車種が主な選択肢となっています。
- トヨタ/日野 コースター・リエッセⅡ
- 三菱ふそう ローザ
(日産 シビリアンは生産終了しています。)
しかし、これらの車両は全国的に需要が高く、納車まで1年以上かかることも珍しくありません。また、10人乗りとして利用されるハイエースコミューターについても、地域によっては新規注文そのものが難しい状況があります。
自治体では、予算編成、入札、契約などの手続きを経て車両を調達するため、スケジュールに余裕がない場合は開校時期までの準備期間が非常に短くなることがあります。
運行開始前の準備期間も重要です
車両が納車されれば、すぐに運行できるわけではありません。運行開始までには、次のような準備が必要になります。
- 運行ルートの試走
- 危険箇所の確認
- 停留所での安全確認
- 児童生徒の乗車体験
- 保護者への説明
- 学校・運行事業者との運用確認
準備期間が十分に確保できれば、運行開始後のトラブルを減らすことにもつながります。
スクールバスは「完成」ではなく「改善」を続けるもの
スクールバスは、校舎のように完成したら終わりというものではありません。運行が始まってからが、本当のスタートです。
社会情勢や道路環境、児童生徒数、保護者のニーズなどは、毎年少しずつ変化します。その変化に合わせて、次の項目を継続的に見直していくことで、安全で持続可能なスクールバス運行につながります。
- 運行ルート
- 便数
- 乗降方法
- 情報共有の方法
運行状況を把握できる仕組みも運用の一つ
スクールバスを改善していくためには、「何が起きているか」を把握することも重要です。例えば、次のような情報です。
- 予定どおり運行できているか
- どこで遅れが発生しているか
- 児童生徒が予定どおり乗車・降車できているか
- 保護者へ必要な情報が届いているか
こうした情報を関係者が共有できれば、運用改善にも役立ちます。位置情報システムや乗降管理システムも、「便利な機能」ではなく、安全で安定したスクールバス運行を支える仕組みの一つとして考えることが大切です。
まとめ
- スクールバス計画は運行開始がゴールではない
- 運行開始後には想定していなかった課題が見つかることもある
- 運転手不足や車両不足は全国共通の課題となっている
- 試走や乗車体験など、運行開始前の準備期間も重要である
- スクールバスは運用を改善し続けることで、安全性と利便性が高まる
学校統廃合では、新しい学校を建設することが大きな目標になります。しかし、児童生徒にとっては、毎日安全に通学できることも同じくらい重要です。
スクールバスは、一度計画を立てて終わるものではありません。社会情勢や地域の状況に合わせて運用を見直しながら、より安全で利用しやすい仕組みへ改善を続けていくことが、長く安心して利用できるスクールバス運行につながります。
次回予告
スクールバスの計画では、利用対象地域や停留所の位置など、「どのルートを走らせるか」も重要な検討項目です。
次回は、「スクールバスのルートはどう決める?」について、具体的な検討の進め方をご紹介します。
この連載の記事一覧
- 第1回:学校統廃合でスクールバスはいつから検討する?3自治体の計画書から見る導入スケジュール
- 第2回:学校統廃合でスクールバス計画は完成しない 運行開始後の「運用」を考えることが重要です(この記事)
- 第3回:スクールバスのルートはどう決める?(8月3日公開予定)
- 第4回:スクールバスの利用対象はどう決める?(8月5日公開予定)
- 第5回:学校設計とスクールバスの関係(8月7日公開予定)
- 第6回:保護者説明会でよくある質問(8月10日公開予定)
- 第7回:スクールバスICT導入のタイミング(8月12日公開予定)






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