オンデマンドバス、デマンド交通のデメリット・課題を解決するには
コミュニティバス
2022/08/19
少子高齢化や過疎化が進む今、地方自治体で「デマンド交通」の導入が進んでいます。 路線バスの運行が難しい地域では、ライフラインとなる住民の交通手段をどう確保するのかが重大な課題の一つです。 「デマンド交通」は、その問題を解決できる交通システムとして注目されていますが、利用者のニーズに柔軟に対応できる一方、デメリットや課題もあります。
この記事では、デマンド交通とはどんなものなのか、その種類やメリットとデメリット、効果的に運行するために解決するべきポイントなどを紹介します。
デマンド交通・オンデマンドバスとは?
「デマンド交通」とは、利用者のニーズに合わせて柔軟に運行する交通システムのことです。 通常の路線バスなどは、定められたルートを決まった時間に走行する、というスタイルが一般的です。 「デマンド交通」は、路線バスのような時刻表がなく、予約などに合わせて運行され「オンデマンドバス」と呼ばれることもあります。
近年デマンド交通の導入が多くなっている背景には、高齢化が進む過疎地域が増えていることやマイカー普及率が高く路線バスの運行維持が困難になっていることなどがあります。 今後も少子高齢化が進むとされる日本では、デマンド交通のニーズがさらに高まっていくと考えられています。
デマンド交通・オンデマンドバスの分類
デマンド交通には、運行スタイルによっていくつかの種類があり、各地域によって導入実態はさまざまです。 それぞれの特徴を紹介していきます。
定路線型
通常の路線バスと同じく、決められたルートで運行。所定のバス停で乗り降りをするが、予約があれば運行し、予約がなければ運行しない方式。
迂回ルート・エリアデマンド型
あらかじめ決められたルートをベースに、予約に応じてその都度変更。あらかじめ定められた迂回ルートやエリアへ運行する運行方式。
自由経路ミーティングポイント型
運行ルートは定めず、予約に応じて所定のバス停などの間を最短経路で結ぶ方式。移動時間を短縮でき、利用者がバス停まで移動する負担を軽減できるスタイル。
自由経路ドアツードア型
運行ルートやバス停などは設けず、指定エリアで予約のあるポイントを巡回する運行形式。一般的なタクシーとの差別化を図るため、目的施設や出発施設を限定する場合も。
また、デマンド交通の種類は、ダイヤが固定されているかどうかでも分類されます。 あらかじめ運行ダイヤが決められている「固定ダイヤ型」や、ある程度の発着時刻が設定されている「基本ダイヤ型」、運行時間内であれば、需要に応じて随時運行する「非固定ダイヤ型」などがあります。
▼参考 国土交通省「オンデマンド交通の現状と課題」 http://www.odtc.jp/docs/confe/09-1_shiryou.pdf
デマンド交通・オンデマンドバスのメリット・デメリット
路線バスを維持するのが難しい地域では、デマンド交通を導入することで、利用者ゼロでもバスを走らせなければならない、という状況が改善できるでしょう。 さらに「きめ細かなニーズに対応できる」、「財政負担を軽減できる」、「生活の足を確保できる」など、多くのメリットがあります。
ただ、1人あたりの輸送コストは通常の交通システムより上昇しますし、利用者のニーズを見極めなければ、「予約が面倒で利用されない」「利用者が多くなると対応できない」など、逆に不便になるデメリットも考えられます。
デマンド交通システムの具体的なメリットとデメリットを、それぞれの分類ごとにピックアップしていきましょう。
定路線型のメリットとデメリット
メリット:時刻表が決まっており、従来の路線バスに近いサービスを提供することができ、利用者側のシステムが理解しやすい。
デメリット:自由度の高いデマンドシステムと比べると、ルートや細かいニーズに対応する柔軟性に欠ける。
迂回ルート・エリアデマンド型のメリットとデメリット
メリット:予約がある場合のみ迂回することで、効率的にルート沿線のニーズに応えることができる。
デメリット:運行コストの削減効果は限定的。
自由経路ミーティングポイント型のメリットとデメリット
メリット:需要に合わせた運行が可能となり、乗客がいなくても運行するなどのムダを減らすことができる。
デメリット:利用地域や利用者が多くなると、目的地に到着する時刻にばらつきが出る可能性がある。
自由経路ドアツードア型のメリットとデメリット
メリット:利用者のアクセス負担を大幅に減らすことができ、満足度を高めることができる。低密度な需要を広くカバーすることが可能。
デメリット:需要に応えられる量が、最も少なくなり、予約が多い場合の配車が困難。
デマンド交通・オンデマンドバスの失敗例と課題解決
現在、デマンド交通は公共交通に関する課題を解決するための方法として、導入する自治体が増加しています。 2013年度には311市町村だった導入自治体数は、2020年度には700市町村にまで広がりました。
しかし、デマンド交通を導入したものの、廃止や別の交通手段へ変更することになった事例も報告されています。 主な理由としては、PR不足や調査不足で利用者が当初の想定より少ない、既存の路線バスと競合してしまった、コストがかさみ運行を継続できなかった、などです。 このような失敗を避けるために、特に注意するべき3つのポイントがあります。
ポイント1:運行エリアのニーズを考え、利用しやすく
デマンド交通を運行させる場合、地形や立地状況、住民の年齢層などはエリアごとにさまざまです。 運行形式を検討する際は、「どの時間帯に運行するか」「どんな人がどのような目的で利用するか」「どこからどこへ送迎するか」「どんな車両にするか」など、具体的なニーズを考える必要があります。
デマンド交通には多くの成功事例もありますが、その見よう見まねで”導入するとすべてが解決する”という考えで進めると、効果が上がりません。 走らせること自体を目的にせず、運賃体系や予約システムをわかりやすくし、住民が利用しやすい運行条件にすることが大切です。
ポイント2:事前調査をしっかりと行う
「利用者が想定よりも少なかった」というのは、失敗例として1番多く挙げられる理由です。 実際に、一方向運行による利用の不便性、沿線に病院・公共施設が少なく利用が低迷した、一部ルートでバス利用より徒歩の方が速く利用が低迷したなどの報告があります。 これらは、運行当初の利用者数予測に問題があったことが原因です。 まずは、各世代へ均等にアンケート調査などを行い、ニーズを把握し採算性などを十分に検討することが重要です。
ポイント3:民間交通事業者や地域住民と協力する
公共交通機関として導入されることが多いオンデマンド交通ですが、民間交通事業者や地域住民との協力も重要です。 バス・タクシー事業者に「民業圧迫」という先入観を持たれてしまった、民間路線バスと路線が重複してしまった、などの事例は、民間事業者との理解・協力不足によるものです。
また、行政施設を無理に結びつけたことで利用が低迷したという報告もあり、行政主導で行うだけでなく、地域住民の声も採用し、自治体全体で地域活性化につなげられるような交通システムの構築を目指すことが必要です。
▼参考 国土交通省「交通政策基本計画」 https://www.mlit.go.jp/common/001069407.pdf
京都市におけるオンデマンド交通システム導入に関わる課題抽出調査報告書 https://www.kunimoto.org/wp-content/uploads/2018/04/H24%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8.pdf
運行管理システム機能搭載の「モークル」で業務効率化
デマンド交通は、既存の路線バスやタクシーよりも複雑な運行になる傾向があります。 予約に応じて毎回違うルートを走行し、毎回違う距離を走るので、それに伴う運行管理業務も大きな負担になります。 IT化を導入する自治体もあり、運行データや予約状況がPCやネット上で管理可能になりますが、高齢者が利用しにくいという声もあります。 利用者の満足度を考えると、デマンド交通よりも、位置情報通知システム「MOQUL(モークル)」を利用した送迎バスの方が利便性が高いと言えるのではないでしょうか。 モークルは、専用のアプリなどをインストールする必要はなく、普段利用しているLINEを使用し、簡単操作ですぐに利用できるのが最大の特徴です。 「今どこ?」ボタンをタップするだけで、送迎バスの位置情報を取得でき、リアルタイムで送迎バスの現在位置を正確に知ることができます。
また、モークルには、パイオニアの運行管理システム「ビークルアシスト」が標準装備されており、運転日報の作成やドライバーの運転診断、バスの動態管理、危険運転の警告など、さまざまな機能も搭載されています。 管理が複雑なデマンド交通に比べ、運行管理業務を効率化でき、利用者の満足度も高められる「モークル」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
▼モークルの運行管理・ドラレコ機能を詳しく見る
https://moqul.net/reason#tcs
まとめ
- 「デマンド交通」とは、利用者のニーズに合わせて柔軟に運行する交通システムのこと
- 運行スタイルによって「定路線型」「迂回ルート・エリアデマンド型」などの種類がある
- ニーズに柔軟に対応できるメリットがあるが、コストがかさむデメリットも
- 導入したものの廃止になるケースもあり、ニーズの見極めや事前調査が重要