コラム

トップ > コラム > 電動バス×位置情報システムの導入事例|岐阜県美濃加茂市「あい愛バス」に学ぶ地域交通の可能性

電動バス×位置情報システムの導入事例|岐阜県美濃加茂市「あい愛バス」に学ぶ地域交通の可能性

お役立ち情報

2023/05/26 (更新日:2026/09/05)

マイカー所有が一般的になったクルマ社会では、地域交通の利用者数が減少し、民間交通事業者の不採算路線からの撤退や運行回数の減少などの問題が深刻化しています。
公共交通空白地域をカバーするため、コミュニティバスや電動バスといった地方自治体が運営する地域交通の果たす役割に注目が集まっています。

地域公共交通に求められる役割の全体像についてはこちらの記事で解説していますので、この記事では、環境面での取り組みとして注目されている「電動バス」と、実際に電動バスと位置情報システムを組み合わせて運用している岐阜県美濃加茂市の事例を中心にご紹介します。

自治体が運営するさまざまなバス

自治体が運営するバスには、都道府県や市町村が運営する乗合バスやコミュニティバスがあります。各地で民間の路線バスが廃止される中でコミュニティバスを導入する自治体は増加傾向にあり、コミュニティバスの注目は高まっています。コミュニティバスの定義や、全国の成功事例についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

電動バスとは

コミュニティバスの導入目的の一つに環境面があったように、近年ではCO2排出量削減の取り組みが課題となっています。そこで注目されているのが電動バスです。自治体が運営するバスにも電動バスが導入されるようになってきています。

電動バスの特徴には次の3つが挙げられます。

  • ゼロエミッション(走行時に大気汚染物質やCO2が出ない)
  • 低騒音・低振動、快適な乗り心地
  • 災害時に電力供給源として活用

電動バスには排出ガスが一切なく、走行騒音も大幅に減少するといったメリットがあります。

美濃加茂市コミュニティバス「あい愛バス」

美濃加茂市は、岐阜県の南部に位置する人口約57,000人の都市です。コミュニティバスである「あい愛バス」は2000年10月より運行を開始しました。

利用者数は伸び悩んでいましたが、2017年10月に大幅な再編が行われて運行ルートや頻度・車両が一新されたことで利用者が増加するようになりました。2021年度は過去最高の利用者数(106,927人)となり、再編前である2016年の利用者数の6.7倍になっています。

あい愛バスには以下の特筆すべき特徴があります。

全路線でスマートフォンによるバスの位置情報システムを導入

2023年5月現在、あい愛バスには9路線あり、各路線で1日8便を毎日運航しています(12月31日から1月2日を除く)。

あい愛バスは、全路線でスマートフォンのSNSアプリであるLINEを使ったバス位置情報システム「MOQUL(モークル)」を導入しています。バスの現在位置をLINEの画面でボタンをタップするだけで確認できるので、バス利用者の利便性の向上につながっています。

県内で初めてコミュニティバスに導入された電動バス

美濃加茂市は2021年に「ゼロカーボンシティみのかも宣言」をしました。この宣言は、脱炭素社会に向けて2050年の二酸化炭素の実質排出量ゼロに取り組むことを表明したものです。あい愛バスにおいても車両の更新を進めていく際には可能な限りエンジン車から電動車への転換を推進するとしています。

実際に2022年に電動バス1台が導入され、同年3月7日より運行を開始しました。岐阜県内ではコミュニティバスに電動バスを導入した初の事例となっています。

導入された車両は、中国の電気自動車メーカーBYDの小型電気バス「J6」です。J6は31人乗りの小型バスで、以下のような特徴があります。

  • 走行中のCO2排出がゼロ
  • 約200kmの航続距離(乗車率65%、エアコン不使用)
  • ノンステップ仕様
  • 災害時には非常用電源として活用可能

電動バスの導入と、位置情報システムによる利便性向上を組み合わせることで、環境面・利用者満足度の両面から地域交通の価値を高めている事例だといえます。

地域交通が抱える課題

地域交通を支える手段として期待されるコミュニティバスや電動バスですが、安定した運行を続けていくためには課題もあります。

深刻化する運転手不足

バス業界全体で運転手不足が課題となっています。運転手不足の背景には、輸送人員の減少に伴うコスト削減によって運転手の負担が増加するにも関わらず待遇は悪化しているという状況があります。また、二種免許取得者自体の減少や高齢化、高校新卒者の採用が難しく中途採用に依存、トラック業界との人材の取り合いなどもあります。コミュニティバスも例外ではなく、コミュニティバスの入札を実施しても運転士がおらず入札不調に終わる例も出ています。

デマンド型交通への移行という選択肢

路線バスやコミュニティバスに替わる運行形態として、「デマンド型交通」への移行を選ぶ自治体もあります。仕組みや導入時の注意点についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

まとめ

  • 地域交通における環境面の取り組みとして、電動バスの導入が注目されている
  • 電動バスはゼロエミッション、低騒音・低振動、災害時の電力供給源としての活用というメリットがある
  • 岐阜県美濃加茂市の「あい愛バス」は、電動バスと位置情報システム「モークル」を組み合わせて利便性を向上させている
  • 2021年度の利用者数は再編前の6.7倍となる過去最高を記録
  • 運転手不足など地域交通全体の課題は残るが、環境対応と利便性向上を両立する好事例といえる

(執筆者:山口 史)


コラム一覧に戻る

おすすめ記事

カテゴリ

今すぐモークルの画面をお試し! 今すぐモークルの画面をお試し!